はじめまして。株式会社Act2の共同代表、近藤強です。
私はいま、平田オリザさんが主宰する劇団「青年団」で俳優として活動しながら、演技を教えたり、舞台の稽古場で通訳をしたりと、演劇に関わる仕事を続けています。気がつけば、演劇は私にとって、表現の場であると同時に、人と人の関わり方を考え続ける場にもなっていました。そんな中で、長く取り組んできたのが、演劇の手法を活かした企業研修です。
このブログでは、Act2を立ち上げた理由や、私がなぜこの仕事に取り組み続けているのかを、少しずつお伝えしていけたらと思っています。初回となる今回は、私自身のこれまでの歩みも交えながら、演劇を活用した研修に出会ったきっかけについて書いてみたいと思います。
この手法に出会ったのは、ニューヨークで俳優として活動していた頃でした。1994年に渡米し、アイオワ大学で演劇を学んだ後、ニューヨークのネイバーフッド・プレイハウスを卒業。2007年に帰国するまで、現地で俳優として活動していました。
転機になったのは、2003年のことです。所属していた劇団に、研修会社から「アジア系の俳優を探している」という連絡が入り、オーディションを受けることになりました。そこでご縁をいただき、大手証券会社向けのダイバーシティ研修で、日本人役を演じる機会を得ました。
そのときの私は、まだ「フォーラムシアター」という言葉さえ知りませんでした。けれど、現場に入ってみると、そこには私がそれまで知らなかった、演劇のもう一つの可能性がありました。
職場で実際に起こりそうな場面を、俳優が短いシーンとして演じる。そこには、無意識の偏見や立場の違い、文化のずれ、性別や人種にまつわる思い込みなど、組織の中で起こりうる繊細なテーマが含まれています。
そして印象的だったのは、上演のあとでした。俳優たちは役柄のまま舞台に残り、参加者の皆さんと対話を続けます。「なぜその言動をしたのか」「そのとき何を感じていたのか」「別の関わり方はあったのか」。そんなやり取りの中で、一方的に答えを受け取るのではなく、それぞれが自分で考え、気づいていく時間が生まれていました。
私はその場に、とても心を動かされました。演劇には、言葉だけでは届きにくいことを、場の空気や身体の感覚を通して伝える力がある。頭で理解するだけでなく、心が動いて初めて見えてくるものがある。そんな体験を、研修の現場で目の当たりにしたのです。
2003年から2007年に帰国するまでの間、私は俳優として、大学のMBAコースや金融機関など、さまざまな現場で研修に参加しました。帰国後は、イギリスの研修会社とも仕事をしながら、ファシリテーターとして外資系企業向けの研修にも関わるようになりました。
俳優としてその場に立つこと。ファシリテーターとして、参加者の声に耳を傾けながら場をつくること。その両方を経験する中で、この手法には、人と組織が互いを理解し合うための大きな可能性があると感じるようになりました。
失敗しながら学べること。対話を通して、自分ひとりでは気づけなかった視点に出会えること。虚構の場だからこそ、安心して本音に近づけること。そうした積み重ねの先に、演劇を活かした学びを日本でももっと広げていきたいという思いが強くなっていきました。それが、Act2を立ち上げた理由の一つです。
Act2という名前には、演劇の「第二幕」と、「失敗をしても新たに挑戦できる場」という意味を込めています。私たちは、演劇を単なる表現活動としてではなく、人が安心して考え、試し、学び合える場をつくるための実践的な手法として活かしていきたいと考えています。
このブログでは今後、研修のこと、現場で感じたこと、そして人が対話を通して学んでいく面白さについて、少しずつ発信していければと思っています。Act2の取り組みに、少しでも親しみを持っていただけたらうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。